「探偵に浮気調査を頼むこと自体は、法律的に問題ないの?」「尾行やGPSって、そもそも違法じゃないの?」——探偵業に対して、こうした不安を持たれる方は少なくありません。「探偵の調査はグレーゾーン」という表現を見聞きしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
結論から言えば、探偵業そのものは、法律に基づいて認められた合法な事業です。ただし、その調査手法の一部——特にGPS機器の無断設置——については、かつては「グレーゾーン」とされてきたものが、近年の裁判所の判断や法改正によって、違法性がかなり明確になっています。この記事では、探偵業を規律する法律の内容、合法的な調査の範囲、そして実際の判例を交えて、依頼者として知っておくべき注意点を整理します。
探偵業は「届出制」の合法な事業である
探偵業法という法律に基づいている
探偵業は、平成19年(2007年)に施行された「探偵業の業務の適正化に関する法律」(探偵業法)に基づいて営まれています。「探偵」という名称と「興信所」という名称の違いについては、探偵と興信所の違いでも詳しく解説していますが、法律上はどちらも同じ枠組みで規制されています。この法律が制定される以前、探偵業には特に規制がなく、個人情報の乱用や違法な調査手法によるトラブルが社会問題化していました。その反省から、依頼者・調査対象者双方の権利利益を保護する目的で、この法律が作られました。
探偵業を営むには、営業を開始する前日までに、営業所ごとに所在地を管轄する警察署を経由して、都道府県公安委員会へ届出を行うことが義務付けられています。届出をせずに探偵業務(尾行・張り込み・聞き込みなどによる調査とその報告)を行えば、それ自体が違法業者ということになります。
探偵業に「許可」は不要、しかし誰でも営めるわけではない
探偵業は「許可制」ではなく「届出制」です。特別な資格試験のようなものは必要ありませんが、一定の欠格事由(禁錮以上の刑に処せられた者、過去5年以内に営業停止処分に違反した者など)に該当する場合は、届出をしても営むことができません。
届出をしても「特別な権限」が与えられるわけではない
ここが誤解されやすいポイントです。探偵業の届出をしたからといって、探偵業者や調査員に、一般の人にはない特別な権限が与えられるわけではありません。探偵業法自身が、他の法令で禁止・制限されている行為まで許すものではないと明記しています。つまり、「探偵だから許される」という調査手法は存在せず、一般の人が行えば違法になる行為は、探偵が行っても違法です。探偵が警察と同じ捜査権限を持っているわけではない、という点は特に誤解されやすいので覚えておいてください。
尾行そのものは違法ではない
「尾行=ストーカー行為では?」と不安に思う方もいらっしゃいますが、尾行という行為そのものが違法なわけではありません。公道・公共の場所で他人の後をついて行動を確認すること自体は、誰でも行える行為です。
違法となるのは、対象者に恐怖や不安を与えるような態様(執拗な接近、待ち伏せ、威圧的な言動)を伴う場合や、住居侵入など他の法令に触れる行為を伴う場合です。探偵の調査は、対象者に気づかれないよう距離を保ちながら行動を記録するものであり、対象者に接触・威圧を加えることを目的とはしていません。実際の調査がどのように進むかは、ご相談から解決までの流れで具体的に説明しています。
探偵であっても違法になる調査手法
住居侵入
調査対象者を見張るために、対象者や第三者の敷地・建物に無断で立ち入れば、住居侵入罪が成立します。マンションの共用部分であっても、管理者の許可なく立ち入ることが問題視されるケースがあります。
GPS機器の無断設置(判例あり)
GPSを使った位置情報取得は、かつては「グレーゾーン」とされてきましたが、近年、裁判所の判断が明確になっています。
旭川地方裁判所 令和6年3月22日判決では、探偵業者が浮気調査のために調査対象者(依頼者の夫)の車両へ無断でGPS機器を設置し、位置情報を取得したことに加え、ホテル敷地内での写真撮影を行ったことについて、プライバシー侵害にあたるかが争われました。裁判所は、GPS機器の設置・位置情報の取得、およびホテル敷地内への立ち入り撮影の双方について不法行為の成立を認め、原告1人あたり慰謝料20万円・弁護士費用相当額2万円の支払いを探偵業者に命じました。この判断は札幌高等裁判所(令和7年1月31日判決)でも維持され、確定しています。
また、令和3年(2021年)のストーカー規制法改正により、相手の承諾なく所持品にGPS機器を取り付けて位置情報を取得する行為そのものが規制対象として明文化されました。設置のために対象者の車両や住居に無断で近づく行為が、住居侵入や器物への不正な干渉にあたる可能性もあります。
盗撮・盗聴
私的な空間(自宅内、更衣室、ホテルの客室内など)を対象とした盗撮・盗聴は、プライバシー侵害・軽犯罪法違反などにあたります。上記の判例でも、ホテル敷地内に無断で立ち入って撮影した行為について、プライバシー侵害が認められています。調査は、あくまで対象者が公道上や外部から見える範囲で行う行動を確認するものであり、私的空間の内部にまで踏み込むものではありません。合法的に収集された証拠がどのように報告書へまとめられるかは、調停・裁判で勝てる証拠をご覧ください。
ストーカー行為・つきまとい
調査対象者に不安や恐怖を与えるような執拗なつきまとい、待ち伏せ、面会の強要などは、ストーカー規制法に抵触するおそれがあります。
職権を装った聞き込み
警察官・行政職員・弁護士など、公的な立場を装って聞き込みを行う行為(いわゆる「なりすまし」)は、詐欺罪や軽犯罪法違反にあたる可能性があります。
他人のスマートフォン・LINEの無断閲覧・操作
対象者本人以外が、本人に無断でスマートフォンやLINEの内容を閲覧・操作する行為は、プライバシー侵害にあたるほか、状況によっては不正指令電磁的記録に関する罪などに触れる可能性があります。探偵が調査の一環として対象者のスマートフォンを無断で操作することはありません。
合法的な調査として認められている範囲
一方で、以下のような調査手法は、適切に行う限り合法です。
- 公道上・公共の場所での尾行・張り込み
- 対象者の周辺への聞き込み(身分を偽らない範囲で)
- 公開されている情報の収集・分析
- 外部から視認できる範囲での撮影(自宅の外観、出入りの様子など)
- 対象者の同意がある場合のGPS機器の使用(依頼者自身が所有・使用権を持つ車両など)
合法的な調査であっても、「見えている部分から何が起きているかを合理的に推測する」という組み立てが基本になります。私的な空間の内部に踏み込むのではなく、対象者の行動パターン・出入りのタイミング・同行者の様子といった、外部から確認できる事実を積み重ねていくのが、探偵調査の実務です。
依頼者側にも知っておいてほしいこと
違法な行為を依頼することはできない
探偵業法では、探偵業者が依頼者と契約を結ぶ際、調査結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いなど、違法な目的のために用いない旨の書面を依頼者から受け取ることが義務付けられています。「対象者に直接乗り込んで問い詰めたい」「GPSをこっそり付けてほしい」といった依頼は、探偵業者側が応じられない、あるいは断るべき内容です。
依頼者自身がGPSを設置する場合の注意
「探偵に頼まず、自分でGPSを付けて確認したい」と考える方もいらっしゃいますが、これも対象となる車両の所有権や使用権の状況によっては、違法となる可能性があります。婚姻中の夫婦間であっても、車両が相手の単独所有・単独名義である場合などは、慎重な判断が必要です。この点は、探偵に相談する前に、まず知っておいていただきたい注意点です。
違法業者を見分けるためのチェックリスト
- 探偵業届出番号が明示されているか(公安委員会届出第◯◯号)
- 契約前に、調査結果を違法な目的に使わない旨の書面手続きがあるか
- GPS無断設置など、違法性の高い手法を提案してこないか
- 「絶対にバレない」「何でもやります」といった無責任な表現を使っていないか
- 契約前の重要事項説明が書面で行われるか
これらの基準は、千葉の探偵の選び方でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
当社の調査方針について
当社では、GPS機器を無断で設置するような違法性の高い調査手法は行いません。尾行・張り込み・聞き込み・外部からの撮影といった合法的な手法を組み合わせ、裁判・調停の場でも証拠として使える形式での報告書作成を行っています。「証拠が欲しい」という思いから、つい違法性の高い方法に頼りたくなる場面もあるかもしれませんが、違法に集めた証拠は、後から証拠能力そのものが否定されたり、逆にプライバシー侵害で損害賠償を請求されたりするリスクがあります。合法的に、かつ確実に証拠を残すという視点を大切にしています。ご主人の浮気調査、奥様の浮気調査についても、まずはお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q. 探偵に依頼すること自体は違法ではありませんか?
違法ではありません。探偵業法に基づいて届出をした事業者に依頼することは、合法な行為です。
Q. 探偵は警察と同じ権限がありますか?
いいえ。探偵業者や調査員に、一般人にはない特別な捜査権限が与えられているわけではありません。他人の敷地に無断で立ち入る、対象者に強制的に接触するといった行為は、探偵であっても一般人と同様に違法です。
Q. 探偵はGPSを使って調査してくれますか?
無断でのGPS設置は、旭川地裁令和6年3月22日判決などにより違法性が明確になっています。信頼できる探偵社であれば、GPSに頼らず、尾行・張り込み・聞き込みといった合法的な手法を組み合わせて調査します。
Q. LINEを勝手に見る調査は違法ですか?
対象者本人に無断でLINEの内容を閲覧・操作する行為は、プライバシー侵害にあたるほか、状況によっては別の法律にも触れる可能性があります。探偵がこうした方法で調査することはありません。
Q. 探偵は携帯電話の中身を調べられますか?
いいえ。対象者本人のスマートフォンを無断で閲覧・操作することは行いません。調査はあくまで、外部から確認できる行動の記録が基本です。
Q. 自分でGPSを付けて浮気の証拠を集めても大丈夫ですか?
車両の所有権・使用権の状況によっては違法となる可能性があります。判断に迷う場合は、契約前に探偵や弁護士に相談することをお勧めします。
Q. 違法な方法で集めた証拠は、離婚や慰謝料請求に使えますか?
違法性の程度によっては、証拠として認められないだけでなく、証拠収集の方法自体について、相手方から損害賠償(反訴)を請求されるリスクもあります。合法的な手法で集められた証拠かどうかは、非常に重要です。
Q. 届出番号のない探偵事務所に依頼するとどうなりますか?
届出をせずに探偵業務を行うこと自体が違法です。そうした事業者に依頼した場合、調査手法の適法性や、トラブル時の対応にも不安が残ります。
まとめ
探偵業そのものは、探偵業法に基づく届出制の合法な事業です。依頼すること自体を心配する必要はありません。ただし、調査の「手法」によっては、探偵であっても住居侵入・GPS無断設置・盗撮盗聴などの違法行為にあたることがあり、GPSについては実際の判例で違法性が認定されています。
信頼できる探偵社を選ぶ基準は、届出の有無だけでなく、違法性の高い調査手法(特にGPSの無断使用)を提案してこないか、契約前に法令に基づいた説明を丁寧に行うかという点です。調査料金の仕組みとあわせて、契約前にしっかり確認することをお勧めします。
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