「慰謝料は取れました。でも、そんな問題じゃないんです」

報告の後、しばらく経ってからHさん(20代・公務員)が言った言葉です。静かな声でした。怒りでも悲しみでもない、何か別の感情——信じていたものが根本から崩れたときの、あの感覚に近いものが、その言葉には込められていたように思います。

この記事を書くか少し迷いました。当事者にとってはあまりにも個人的な話です。ただ、「まさかあの人が」という経験をしている方は少なくない。そういう方に、何かが届けばと思って書くことにしました。

「この人は絶対にそういうことをしない」と思っていた

Hさんと妻は、ともに20代の公務員夫婦でした。知り合ったのも職場関係で、真面目な者同士が引き合った、そういう出会いだったといいます。

妻は特に、男女関係については極めて真剣な考えを持っている人でした。不倫や浮気の話題が出ると、はっきりと否定的な意見を言う。Hさんの周囲の人間も、「あの奥さんに限って」と口を揃えるような人だったといいます。

「だから疑い始めても、自分がおかしいんじゃないかと思っていた。あの人がそんなことをするはずがない、って」

疑いと信頼の間で揺れながら、Hさんは半年近く一人で抱えていました。

積み重なっていった違和感

最初のサインは、出張の日の「連絡の取れなさ」でした。

Hさんの仕事は月に数回、泊まりの出張が入ります。以前は出張中もこまめにLINEのやり取りがあったのに、ある時期から返信が遅くなり、既読がなかなかつかない日が出てきました。「忙しかった」「寝てた」と言われれば追及できない。しかしそれが出張のたびに繰り返されるようになりました。

帰宅時間にも変化が出ました。定時上がりが多かった妻が、「残業」を理由に帰りが遅くなる日が増えていきました。同じ公務員として、職場の繁忙期はHさんにも大体わかります。妻の「残業」が増えた時期と、職場の繁忙期が一致していないことが気になりました。

それでもHさんは「自分の思い過ごし」と言い聞かせ続けました。

決定的だったのは、下着だった

Hさんが相談を決意したのは、洗濯物がきっかけでした。

妻の下着に、見たことのないものが混じっていました。派手な色・デザイン——普段の妻の選ぶものとは明らかに違う。「どこで買ったの?」と聞けるような雰囲気ではなかった。ただその下着が、Hさんの中で何かを決定的にしました。

「それまでは疑っている自分がおかしいと思っていた。でもあれを見て、調べなければいけないと思った」

浮気の発覚がきっかけになるものとして、スマートフォン・領収書・香水の匂いなどがよく挙げられますが、Hさんのケースのように「持ち物の変化」が決定打になることもあります。普段の生活の中で「この人らしくない」と感じるものが目に入ったとき、その感覚は往々にして正しい。

調査の概要

Hさんから得られた情報は以下の通りでした。

  • 妻の職場と通勤ルート
  • 帰宅が遅くなる曜日のパターン(主に火曜・木曜)
  • 妻が使用する交通手段(電車・自転車)

帰宅が遅くなる火曜日に合わせて調査を開始しました。

初日、妻は定時後に職場を出て、電車で移動。最寄り駅からは徒歩で近くのスーパーへ立ち寄り、食材をまとめて購入しました。その後、住宅街を歩いて一軒家へ。表札と外観から、一人暮らし用の持ち家であることが確認できました。妻が中に入ったのは夕方の早い時間。出てきたのは2時間半後でした。帰宅後、Hさんへのラインには「今日も残業だった、疲れた」と送られていたそうです。

同じ家への訪問を別の曜日にも確認。家の所有者について調査したところ、40代・バツイチ・独身の男性であることが判明しました。仕事上の繋がりでHさんの妻と知り合った人物でした。

2回目の調査では、男性が帰宅するタイミングと妻の訪問が重なる場面を記録。同一の住居への複数回の訪問・男性との同行場面・スーパーでの食材購入という一連の行動が証拠として揃いました。

さらに別日の調査で、二人が外出して飲食店に入り、男性の自宅に戻る場面も記録しました。

調査期間は3週間、実調査は5日間でした。

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報告書を受け取ったHさんのその後

調査結果を報告した際、Hさんはしばらく黙っていました。

映像の中の妻は、スーパーの袋を下げて見知らぬ男の家に入っていく。それは普段の生活の延長にあるような、あまりにも自然な姿でした。「非日常の浮気」ではなく、もうひとつの「日常」がそこにあった——Hさんにはそれが、何より辛かったといいます。

「怒鳴りつけたいとか、泣きたいとか、そういう感情じゃなかった。ただ、この人のことを何もわかっていなかったんだと思って」

妻に証拠の存在を告げると、否定はしませんでした。男性についても、関係についても、静かに認めました。

弁護士を通じて、夫である依頼者への慰謝料請求を妻・男性の両方に対して行い相応の慰謝料を受け取りました。複数日にわたる証拠・継続的な訪問の記録・食材購入という「生活の一部」になっていた実態が、交渉において力を持ちました。

その後、離婚が成立しました。

「慰謝料は取れました。でも、そんな問題じゃないんです」——Hさんのその言葉は、お金で解決できるものと、そうでないものがある、ということを改めて教えてくれました。

「まさかこの人が」という経験について

Hさんのケースで最も印象的だったのは、「真面目な人ほど疑えない」という構造です。

不倫や浮気に批判的な発言をしていた人、誠実さを大切にしていると思っていた人、「この人だけは違う」と信じていた人——そういう相手だからこそ、違和感が出始めても「自分の思い過ごし」と片付けてしまいやすい。

しかし現実として、不倫をする人に「こういうタイプ」という絶対的な傾向はありません。不倫をする人の心理については別シリーズでも解説していますが、真面目で誠実に見える人が、特定の状況・特定の相手との出会いによって関係を持ってしまうことはあります。

「信じたい気持ち」と「確かめなければいけない感覚」の間で揺れることは、決して弱さではありません。ただ、その揺れを一人で抱え続けることは、精神的に消耗します。疑い始めた段階で動くことが、結果的に自分を守ることにつながります。

下着・持ち物の変化が「サイン」になるとき

Hさんのケースで決定打になった「下着の変化」は、実は相談の現場でよく聞くエピソードのひとつです。

普段と違う下着・衣類が増えた  「この人らしくない」服装・下着・アクセサリーが増えてきたとき。特定の誰かに見せるために用意したものである可能性があります。

外出前の身だしなみに変化が出た  以前より念入りにメイクをする、香水をつけるようになった、服装に気を使うようになった——浮気中に現れやすい変化のひとつです。行き先が「残業」「友人との食事」であっても、身だしなみの変化は隠しにくい。

出張・残業の日に連絡が取れなくなった  配偶者が不在の日や時間帯に、連絡の返信が遅くなったり既読がつかなくなったりする変化は、浮気を疑い始めたときの初期サインとして多くの事例に共通して現れます。

「らしくない」という直感を大切にする  「この人らしくない」という感覚は、長く一緒にいるからこそ生まれるものです。論理的に説明できなくても、その直感が正しかったケースは少なくありません。

よくある質問

Q. 配偶者の職場関係者との不倫の場合、調査は難しいですか? A. 職場での接触は調査の対象外ですが、勤務時間外の行動を追うことは可能です。Hさんのケースのように、退勤後の行動パターンに着目することで証拠を確保できます。

Q. 相手が独身の場合も慰謝料請求できますか? A. はい。相手が独身であっても、配偶者が既婚と知った上で関係を持っていた場合は慰謝料請求の対象になります。不倫相手への慰謝料請求については別記事で詳しく解説しています。

Q. 住居への訪問だけで証拠として成立しますか? A. 複数回の訪問記録・滞在時間・同行場面が揃うことで、不貞行為を強く推認させる証拠として機能しやすくなります。1回だけでは弱い場合でも、複数日の記録が積み重なることで証明力が増します。

Q. 夫婦ともに若い場合、慰謝料の相場は変わりますか? A. 慰謝料の額は婚姻期間・精神的苦痛の程度・相手の収入などによって変わります。年齢だけで決まるものではありません。慰謝料の相場については別記事も参考にしてください。

Q. 調査中、配偶者に気づかれる可能性はありますか? A. 複数の調査員が連携して動くため、1名が気づかれても追跡を継続できる体制を取っています。また調査中は依頼者の方には普段通りに過ごしていただくことが、調査の精度を守ることにもつながります。

まとめ

市原市在住・20代公務員夫婦のケース。「真面目でそういうことをする人ではない」と思っていた妻の不倫を、派手な下着という小さな違和感から確信に変え、調査に踏み切ったHさんの事例です。3週間・実調査5日間で継続的な関係を示す複数の証拠を確保し、妻・相手男性の両方から慰謝料を受け取った上で離婚が成立しました。

「慰謝料を取れたけど、そんな問題じゃない」——Hさんの言葉が示すように、証拠を集めることはお金のためだけではありません。自分が感じていたことが事実だったと確認すること、そして次の人生に進むための根拠を持つこと。それが、調査を依頼する本当の意味のひとつだと思っています。

疑い始めた段階で、まずご相談ください。

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