「やれることは全部やったんですが、全部バレてしまって」
相談に来たSさん(40代・男性)は、開口一番そう言いました。憔悴した表情でしたが、目には「もう自分では限界だ」という諦めと、「それでも確かめたい」という意志が混在していました。
自力で証拠を掴もうとした。しかし逆に相手に「調べられている」ことを知らせる結果になってしまった。こういうケースは、残念ながら珍しくありません。Sさんの事例は、自力調査のリスクとプロに依頼する意味を、これ以上なく明確に示しています。
疑いの始まりと、自力調査への踏み切り
Sさんが妻の変化に気づいたのは、息子が地域のサッカースクールに通い始めてからしばらくが経った頃でした。
妻がスクールの送り迎えを担当するようになってから、外出の頻度が増えていきました。練習のない日にも「ちょっと出てくる」と家を出ることが増え、帰りが遅い日も目立つようになりました。スマートフォンの扱いも変わりました。以前はリビングに置きっぱなしにしていたのに、常に持ち歩き、充電中も画面を伏せるようになりました。
「コーチと何かあるんじゃないかと思い始めたのは、妻がそのコーチの話を全くしなくなったからです。最初の頃は『コーチがこう言ってた』という話が出ていたのに、ある時期からぴたりと止まった」
人は特定の相手への感情が生まれると、逆にその人の話をしなくなることがあります。Sさんの観察は、鋭いものでした。
確信が持てないまま数ヶ月が過ぎ、Sさんは自分で動くことを決めました。
エアタグの失敗——通知という盲点
Sさんが最初に試みたのは、妻の車へのエアタグの取り付けでした。
Appleのエアタグは小型で安価、位置情報をリアルタイムで確認できる。「これで行き先がわかる」と考えたSさんは、妻の車のタイヤハウス内に取り付けました。
しかし数日後、妻のスマートフォンに「知らないAirTagがあなたの周辺で移動しています」という通知が届きました。
これはAppleが「ストーカー対策」として実装したセキュリティ機能です。エアタグのオーナーとは別のiPhoneユーザーの周辺を、そのエアタグが一定時間以上移動し続けた場合、警告通知が届く仕組みになっています。妻はすぐにエアタグを発見し、取り外しました。
「妻は何も言ってきませんでした。ただその日から、明らかに行動が変わりました」とSさんは言いました。警戒モードに入った、ということです。
令和7年施行の改正ストーカー規制法により、配偶者であっても同意なくGPS・追跡機器を取り付ける行為は違法となる可能性が極めて高くなっています。エアタグが通知でバレるという技術的なリスクに加え、法的なリスクも伴う行為です。
ドライブレコーダーの失敗——履歴の削除という反撃
エアタグがバレた後も、Sさんは諦めませんでした。次に目をつけたのは、もともと車に取り付けていたドライブレコーダーでした。
走行履歴・録画データを確認すれば、どこに行ったかがわかる。Sさんはドラレコの記録を確認し始めました。しかしこれも、妻に気づかれました。
妻はドラレコの操作方法を調べ、走行履歴と録画データをすべて削除するようになりました。Sさんが確認しようとするたびに、データが消えている。証拠を残さないための「反撃」が始まりました。
「エアタグとドラレコの両方がバレたことで、妻はこちらが動いていると完全に把握した。そこからは徹底的に証拠を消されるようになった」
自力調査が失敗しただけでなく、相手に「調べられている」という情報を与えてしまった。これが最も深刻な問題でした。警戒している相手の証拠を掴むことは、通常の調査より格段に難しくなります。
プロへの依頼——警戒している相手をどう調査するか
Sさんが当社に相談に来たのは、二度の失敗から数週間後のことでした。
状況を整理すると、課題は明確でした。妻はこちらが調査していることを知っている。GPS系の追跡は使えない。行動を変えている可能性が高い。通常より高い警戒心を持った相手の証拠を、法的に問題のない方法で取る必要がある。
自力調査が失敗した後の依頼は、ゼロから始める依頼よりも条件が難しい場合があります。相手がすでに警戒しているため、行動パターンが変わっている可能性があるからです。ただし、警戒していても「完全に行動を止める」ことができない場合、かえって慎重な動きの中に規則性が見えてくることがあります。
Sさんから得られた情報は以下の通りでした。
- 息子のサッカースクールの場所・担当コーチの名前と外見・年齢(20代)
- コーチが住むエリア(千葉市内)
- 妻が外出する頻度とパターン(ただしエアタグ発覚後に変化している可能性あり)
- 印西市から千葉市へのルート(高速利用)
調査の概要——高速を使って毎日通っていた
まず、コーチの居住地の特定から始めました。スクール関係者への接触は避け、公開情報と周辺調査から千葉市内のアパートを特定しました。
次に、そのアパート周辺での張り込みを実施しました。妻の行動パターンが変わっている可能性があるため、「妻を追う」のではなく「コーチのアパートを観察する」という方針を取りました。
初日の張り込みで、午前中に妻の車がアパート近くの駐車スペースに入るのを確認しました。妻はスーパーの袋を持ってアパートに入り、約2時間後に出てきました。帰り際に買い物袋は持っておらず、中身を置いてきた様子でした。
翌日も同じパターンで訪問を確認。その翌日も。印西市から千葉市まで、高速道路を使って毎日のように通っていたことが、複数日の記録から明らかになりました。
別日の調査では、コーチが帰宅するタイミングと妻の訪問が重なる場面も記録。アパートへの入退場・複数日にわたる継続的な訪問・滞在時間——これらが証拠として揃いました。
相手が高度に警戒しているにもかかわらず、「毎日通う」という行動自体は止められていなかった。感情がそこまで深かったということでもあります。
調査期間は1ヶ月、実調査は6日間でした。通常より日数をかけたのは、相手の警戒心に合わせて慎重に記録を積み上げる必要があったためです。
報告書を受け取ったSさんのその後
調査結果の報告を受けたSさんは、長い沈黙の後に「やっぱりそうだったか」と言いました。確信はあったが、それが映像として目の前に現れたときの重さは別物だったといいます。
妻に証拠の存在を告げると、今度は否定しませんでした。エアタグとドラレコの件があったこともあり、もはや否定できないと判断したのかもしれません。
コーチに対しては、弁護士を通じて慰謝料請求を行いました。継続的な訪問の記録・複数日の証拠が交渉において効力を発揮し、相応の慰謝料を受け取りました。
夫婦間については、再構築という選択をしました。簡単な道ではありませんが、Sさんは「子どものことを考えた」と言っていました。エアタグのこと、ドラレコのこと——お互いの行動について話し合う場を持ち、そこから関係を立て直す作業を続けているといいます。
自力調査で「やってはいけない」こと
Sさんのケースは、浮気調査でやってはいけないことの典型例です。改めて整理しておきます。
エアタグ・GPSの無断取り付けはしない 技術的に通知でバレるリスクがある上、令和7年施行の改正ストーカー規制法により夫婦間でも違法となる可能性が極めて高い。証拠として使えないだけでなく、自分が法的リスクを負う結果になります。
ドラレコ・スマートフォンを無断で確認するのは慎重に 相手に気づかれると、以降の証拠が消される可能性があります。一度「調べられている」と知られると、調査の難易度が格段に上がります。「見てしまった」という情報は、依頼時に必ず伝えてください。対応方針が変わります。
「調べている」という事実を相手に知らせない 最も重要なことです。自力調査の最大のリスクは、「調べていること」が相手に伝わることです。一度警戒された相手の証拠を取ることは、ゼロからの調査より格段に難しくなります。
感情的に問い詰めない 証拠がない状態で問い詰めると、相手に「何を疑われているか」を教えることになります。否定された場合、以降の行動をより慎重にされてしまいます。
よくある質問
Q. すでにエアタグがバレてしまいました。今からでも調査できますか? A. 可能です。ただし相手がすでに警戒していることを前提に、通常とは異なるアプローチで調査を設計する必要があります。「何がバレているか」を詳しく教えていただくことで、最適な方針を立てることができます。まずご相談ください。
Q. ドラレコのデータを削除されてしまいました。復元できますか? A. 専門の復元業者に依頼することで、削除されたデータが復元できる場合があります。ただし確実ではなく、上書きされていると難しい場合もあります。機器の使用を止めて早めに専門家に相談することをお勧めします。
Q. 相手が警戒しているとわかっている場合、調査費用は上がりますか? A. 警戒度が高い場合、通常より日数をかける必要があることがあります。Sさんのケースも通常より実調査日数が増えました。面談時に状況を説明いただければ、必要な日数と費用の目安をお伝えします。料金体系はすべて込みの明示制です。
Q. 再構築を選んだ場合、コーチへの慰謝料請求はできますか? A. はい。夫婦間で再構築を選んでも、不倫相手への慰謝料請求は別の手続きとして進めることができます。Sさんのケースもそのパターンです。
Q. 子どもがまだ同じスクールに通っている場合はどうすればいいですか? A. 再構築後にスクールをどうするかは、夫婦で決めることです。調査や請求の手続きは、スクールや子どもの生活とは切り離して進めることができます。
まとめ
印西市在住の40代夫婦のケース。エアタグの通知とドラレコの確認が相次いでバレ、相手が完全な警戒モードに入った状態からの調査でした。「妻を追う」ではなく「コーチのアパートを観察する」という方針に切り替え、1ヶ月・実調査6日間で継続的な訪問の証拠を確保。コーチへの慰謝料請求を行い、夫婦は再構築という選択をしました。
「自分で動いて失敗した」という段階からでも、調査は可能です。ただし早いほど、相手の警戒が固まる前に動けます。一人で抱え込まず、まずご相談ください。


