夫のポケットからレシートが出てきたのは、洗濯物を仕分けしているときでした。
日付を見て、Mさん(20代・女性)は手が止まりました。夫が「夜勤だった」と言っていた日の、昼間の時間帯。場所はラブホテルの近くのコンビニでした。夜勤中のはずの人間が、なぜそこに。
「問い詰めようとしたんですが、うまく言い返されてしまって。それが余計につらかった。だから証拠が必要だと思いました」
「後輩の指導を頑張っている」という言葉を信じていた
夫は大学病院で働く男性看護師でした。新人の教育担当を任されたのは、ちょうど変化が始まった頃と重なります。
以前は帰宅すると病棟の話をよくしてくれていた。患者のこと、同僚のこと、うまくいかなかったこと——話してくれることが、Mさんには夫の誠実さのように見えていました。それがある時期からなくなりました。「今日はどうだった?」と聞いても「普通」と返ってくる。
一方でスマートフォンの通知は増えていた。夜勤明けに帰ってきても、すぐ横にならずに画面を確認している。「後輩からの相談が多いのかな」と最初は思っていました。指導担当になったばかりだし、新人の子が頼ってくるのは自然なことだと。
帰宅が遅くなる日が特定の曜日に集中するようになって、「残業」「後輩の相談に乗ってた」という説明が繰り返されるにつれて、Mさんの中で何かが少しずつ変わっていきました。信じたいという気持ちと、でもおかしいという感覚が、ずっと同居していたといいます。
レシートを見つけたのは、そういう日々が続いた後のことでした。
医療現場の指導者という立場が持つ構造
新人看護師の教育は、知識や技術を伝えることだけではありません。
患者の命を預かる現場で、初めてのミスをした日、夜勤が明けて体が限界のとき、「自分にはこの仕事が向いていないかもしれない」と思ったとき——そういう場面を一緒に乗り越える存在が、先輩であり指導者です。「この人がいなければ続けられなかった」という感情は、医療現場の新人には特に生まれやすい。
指導する側にも、それと似た感情が生まれます。自分を頼ってくる後輩、成長を間近で見られる充実感、「自分だけがわかってあげられる」という感覚——これらが積み重なると、関係は職場の範囲を超えていくことがあります。
力関係と感情的な依存が同時に存在するという点で、指導者と教え子の不倫は他の職場不倫とは少し異なる構造を持っています。職場・仕事関連の不倫の構造については別シリーズでも解説しています。
調査の概要
Mさんから得られた情報は以下の通りでした。
- 夫の勤務先病院の場所・シフトのパターン
- 帰宅が遅くなる曜日・夜勤のスケジュール
- 夫が使用する交通手段(電車・自転車)
- レシートから特定できた大まかなエリア
勤務終了時間に合わせて、病院周辺からの行動確認を開始しました。
初日、夫は病院を出た後、駅方向には向かわずに徒歩で近くの建物へ。表札と外観から、病院関係者向けの寮と判断できました。後の調査で、女性専用の看護師寮であることが確認されました。夫はインターフォンを押してそのまま入り、約2時間後に出てきました。
女子寮への出入りはその後も複数日にわたって確認されました。寮から出てきた際に同行していた20代前半の女性が、毎回同一人物であることも記録しました。
非番の日の昼間には、電車で移動した夫が同じ女性と合流し、ラブホテルへの入場を確認。チェックイン・滞在・退出の場面を映像で記録しました。
「夜勤」と言って出かけた夜には、病院ではなく寮方向へ向かう場面を確認。深夜に入り、翌朝に出てきました。レシートの日付と場所が示していたことが、映像によって裏付けられました。
調査期間は3週間、実調査は5日間でした。
「夜勤中のはずなのに、様子がおかしい」——その段階でもご相談いただけます
「バレないと思っていたんでしょうか」
報告を受けたMさんは、映像を確認しながら何度か深呼吸をしていました。
「女子寮に入っているのを見て、どれだけ大胆なことをしていたのかと思いました。バレないと思っていたんでしょうか」
夫に証拠の存在を告げると、言い訳は出てきませんでした。女子寮への複数回の出入り、ラブホテルの利用、夜勤と偽って寮に泊まっていた夜——映像として記録された事実の前に、否定する言葉がなかったといいます。
相手の新人看護師への慰謝料請求は、弁護士を通じて進めました。「まだ若くて、先輩に言われたら断れなかった面もあるかもしれない」という気持ちがMさんの中にあったことは事実です。それでも不貞行為として成立している以上、請求の権利はあります。最終的に示談で解決しました。
夫との関係は、長い時間をかけて考えました。小さい子どもがいること、夫が反省していること——それらを踏まえて、再構築という選択をしました。条件は三つ。相手との関係を完全に断つこと、職場の指導担当を外れること、定期的に夫婦で話し合う場を持つこと。
「子どものために、もう一度だけ信じてみます。でも次はない」
その言葉は静かでしたが、揺れていませんでした。
医療職の「夜勤・残業」という言い訳が機能しやすい理由
医療従事者の配偶者を持つ方に、特有の難しさがあります。
夜勤シフトは複雑で、外部の人間には実態が把握しにくい。「今夜は夜勤」と言われれば、それを確認する手段がない。「後輩の相談に乗っていた」という説明も、医療現場では不自然ではない。
ただ、シフトは事前に決まっているものです。「夜勤だった」という日が、実際のシフト表と一致しているかどうかは、さりげなく確認できる場合があります。Mさんのケースのように、ポケットのレシートや交通系ICカードの履歴が、「夜勤中のはずの場所とは違う」というずれを示すことがあります。浮気が発覚するきっかけとして、こうした日常の中の小さなずれは多くの事例に共通して現れます。
指導担当を任された時期から行動が変わり始めた場合、その変化の中身を見ておくことが重要です。職場の話が急に減った、特定の名前が出なくなった——そういった変化は、浮気のサインとして現れることが多いです。
よくある質問
Q. 夫が指導者という立場を利用していた場合、慰謝料に影響しますか? A. 立場の違いは請求の可否には直接影響しませんが、指導者という立場を利用した関係であることは、行為の悪質性として慰謝料の算定に影響する場合があります。
Q. 相手がまだ20歳前後でも請求できますか? A. 成人年齢(18歳)を超えていれば請求できます。年齢の若さは減額事由になる場合はありますが、請求そのものを妨げるものではありません。
Q. 夜勤のシフトが本当かどうか確認する方法はありますか? A. 直接確認は難しい場合が多いですが、帰宅時間・様子・レシートや交通系ICカードの履歴から実態との乖離が見えてくることがあります。調査によって「夜勤と言っていた時間帯の実際の行動」を記録することも可能です。
Q. 再構築後、相手との関係が続いていないか確認できますか? A. 対応しています。「本当に関係を断ち切ったか不安」という段階でのご相談も、遠慮なくお申し付けください。
Q. 女子寮への出入りは不法侵入になりませんか? A. 夫側の行動が不法侵入にあたるかどうかは、寮の規則や入館の経緯によります。調査においては公道からの記録のみを行っており、建物内への立ち入りは一切していません。
まとめ
佐倉市在住・20代夫婦のケース。大学病院で勤務する男性看護師の夫が、指導担当の新人看護師と不倫。女子寮への複数回の出入り、ラブホテルの利用、夜勤を装っての深夜外泊という実態を3週間・実調査5日間で記録しました。相手への慰謝料請求を示談で解決し、条件付きで再構築という選択をしました。
「信頼していたから疑えなかった」——その言葉は、Mさんだけのものではないと思います。信頼しているから、おかしいと感じても自分を抑えてしまう。その時間が長くなるほど、動き出すタイミングが遅れます。
洗濯物を仕分けしていて見つけたレシート一枚が、Mさんを動かしました。小さな違和感を、見て見ぬふりしなくてよかったと、後から言っていました。


