「もういいです」

4人分の記録が揃った報告書を受け取ったDさん(40代・会社員)は、長い沈黙の後にそれだけ言いました。

怒りでも泣き崩れるわけでもなく、ただ静かに「もういいです」と。その言葉が、この事例のすべてを表していると思いました。

マッチングアプリの画面が、一瞬見えた

妻は船橋市内の歯科医院でパート勤務をしていました。週4回、午前から夕方まで。Dさんが出社した後に家を出て、夕方には帰ってくる。子どもはなく、規則的な生活でした。

変化が始まったのは、妻がスマートフォンを機種変更した頃でした。

新しい端末にしてから、アプリの管理が細かくなりました。通知のプレビューをオフにする、特定のアプリをフォルダの奥に入れる、画面を伏せて充電する。一つひとつは些細なことです。でもDさんには、以前と何かが違うという感覚がありました。

非番の日に出かけることが増えました。「友達と」「買い物に」という説明は特におかしくない。でも頻度が上がるにつれて、説明と実態の間に小さなずれを感じるようになっていきました。

決定的だったのは偶然でした。妻のスマートフォンの画面が一瞬見えた。そこに映っていたのはマッチングアプリのトーク画面でした。

既婚者がマッチングアプリを使っている。その事実だけで、Dさんには十分でした。

マッチングアプリが「従来の不倫」と違う点

職場の同僚、趣味のコミュニティ、共通の知人の紹介——従来の不倫は既存の人間関係の中から発展することがほとんどでした。「気がついたら好きになっていた」という経緯が多い。

マッチングアプリは違います。全く知らない相手と、意図的に会うためのツールです。「誰かを好きになってしまった」ではなく、「相手を選んで会う」という能動的な行動が伴います。

そしてアプリの構造上、複数の相手と同時並行でやり取りすることが容易です。一人との継続的な関係ではなく、複数の相手と断続的に会うというパターンが生まれやすい。

マッチングアプリを使った不倫の構造については別記事でも詳しく解説していますが、Dさんのケースは、まさにそのパターンでした。

調査の概要——毎回、違う相手だった

Dさんから得られた情報は以下の通りでした。

  • 妻の勤務日・非番日のパターン
  • 非番の日の外出頻度と時間帯
  • 妻が使用する交通手段(電車)

非番の日の外出を中心に調査を組み立てました。

1回目、妻は昼過ぎに自宅を出て電車で移動。船橋市内の商業施設周辺で30代と思われる男性と合流し、ラブホテルへ。約2時間後に退出・解散しました。男性Aの外見・特徴を記録しました。

2回目は別の非番日に実施。同じパターンで外出した妻が合流したのは、前回とは違う男性でした。今回も市内のラブホテルへ。男性Bの外見・特徴を記録しました。

3回目も同じ流れで、合流したのは3人目の男性でした。

4回目は昼の外出に加えて夕方にも別の動きを確認。4人目となる男性との接触・ラブホテルへの入退場を記録しました。

調査した日はすべて、相手が異なっていました。

調査期間は2ヶ月、実調査は10日間でした。通常より日数をかけたのは、複数の相手との関係を確実に記録するためでした。

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「4人という数字を聞いたときに」

Dさんは報告を聞きながら、途中から表情が変わっていきました。怒りでもなく悲しみでもなく、何かが抜けていくような顔でした。

「怒りとか悲しみとか、そういう感情より先に、もう終わりにしようという気持ちが来ました。4人という数字を聞いたときに」

妻に証拠の存在を告げると、否定しませんでした。「マッチングアプリを使っていたことは認めます」という言葉がありましたが、Dさんにはもはや理由を聞く気力もなかったといいます。

弁護士と相談の上、特定できた4名それぞれへの慰謝料請求を検討しました。相手の身元特定の程度・証拠の内容・手続きの負担を考慮した結果、主な相手への請求を優先的に進め、示談で解決しました。妻への請求も含め、相応の慰謝料を受け取りました。

離婚が成立したとき、Dさんはこう言っていました。

「長く一緒にいたけど、別の人間だったんだと思います」

怒りが消えた後に残るのは、こういう言葉なのかもしれません。

複数の相手への慰謝料請求——どう進めるか

マッチングアプリで知り合った相手の場合、本名や住所がわからないことがあります。請求を進めるためには相手の身元特定が必要で、調査の映像・写真をもとに弁護士が調査を進めるケースもあります。

全員に請求するか優先順位をつけるかは、証拠の強さ・相手の経済状況・手続きの負担などをもとに弁護士と判断することになります。Dさんのケースでも、4名全員への請求ではなく、証拠の揃っている相手への請求を優先しました。慰謝料請求の流れについては別記事も参考にしてください。

不倫相手への請求と配偶者への請求は別の手続きとして並行して進めることができます。

こういう変化が重なったとき

スマートフォンの管理が急に細かくなったとき。通知のプレビューをオフにする、特定のアプリをフォルダに隠す、充電の場所が変わる——これらが特定の時期から始まった場合、何かが変わったタイミングと重なっていることが多い。浮気のサインと照らし合わせてみてください。

非番・休日の外出が増えたとき。パート勤務の場合、非番の日の行動は配偶者にはほとんど見えません。「友達と」「買い物に」という説明自体はおかしくない。ただ頻度・時間帯・帰宅時間の変化が重なってきたとき、確認する価値があります。

マッチングアプリの痕跡を偶然見かけたとき。画面が一瞬見えた、通知の文面が目に入った——Dさんのようにそういう偶然が調査のきっかけになるケースは少なくありません。浮気が発覚するきっかけとして、こうした偶然の発見は多くの事例に共通して現れます。

「相手が一人とは限らない」という可能性を念頭に置く。マッチングアプリを使った不倫は、特定の相手との継続的な関係ではなく、複数の相手と断続的に会うパターンを取ることがあります。「誰かと会っている」と確信していても、実態はDさんのケースのようなことがあります。

よくある質問

Q. マッチングアプリで知り合った相手でも、慰謝料請求できますか? A. できます。出会いのきっかけは請求の可否に影響しません。不貞行為が立証できれば請求の対象になります。

Q. 相手の身元がわからない場合、請求できますか? A. まず身元の特定が必要です。調査の映像・写真から弁護士が身元調査を進めるケースもあります。特定できた相手から順に進めるという方針も可能です。

Q. 相手が複数いる場合、全員に請求しなければなりませんか? A. 全員に請求する必要はありません。証拠の強さ・相手の経済状況・手続きの負担を考慮して、請求する相手を選ぶことができます。弁護士と相談しながら方針を決めることをお勧めします。

Q. 「マッチングアプリを使っていただけ」という言い訳は通りますか? A. アプリの使用だけでは不貞行為の証明にはなりませんが、ラブホテルへの入退場を記録した映像が複数日分揃っていれば、その言い訳は成立しません。証拠の使える・使えないの分かれ目については別記事も参考にしてください。

Q. 離婚後も慰謝料請求は続けられますか? A. 慰謝料請求の時効(原則3年)内であれば、離婚成立後も請求を続けることができます。弁護士への相談をお勧めします。

まとめ

船橋市在住・30代妻・40代夫の事例。歯科医でパート勤務の妻が非番の日にマッチングアプリで知り合った男性と繰り返し会っていたことを、2ヶ月・実調査10日間で記録しました。確認できただけで4人の男性とのラブホテル利用が証拠として残り、慰謝料請求・離婚が成立しました。

「マッチングアプリを使っているかもしれない」と思ったとき、相手が一人とは限りません。そしてDさんのように、覚悟していた以上の事実が出てくることもあります。

知ることは辛い。でも知らないまま過ごすことも、同じくらい消耗します。まずご相談ください。

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