「仕事熱心だと思っていました。まさかそういう理由で店に残っていたとは」
Eさん(30代・女性)はそう言いながら、怒りというより疲れた顔をしていました。怒鳴りたいほどの怒りはあったはずです。でもそれより先に、信じていた時間がすべて塗り替えられていく感覚があったのだと思います。
「仕事が大変なのはわかっていた」
夫が飲食チェーンの店長になってから、外出が増えました。シフト外でも店に顔を出す、深夜に「今夜は帰れない」という連絡が来る——それをEさんは「責任感のある人だから」と受け取っていました。
「今日は仕込みが終わらなくて」「スタッフのトラブルがあって」——理由はその都度もっともらしく聞こえました。飲食業の店長ならあり得る話だと、Eさんは自分に言い聞かせていました。
翌朝帰宅する夫の様子が、長時間働いた人間らしくないことには気づいていました。疲れていない。むしろどこかすっきりしている。でもそれを口にする言葉を、Eさんはずっと飲み込んでいました。
「仕事が大変なのはわかっていた。でも何かが違うという感覚がずっとあって、自分を信じていいのかわからなくなっていました」
スマートフォンの変化もありました。以前はリビングに置きっぱなしにしていたのに、常に手元に持つようになりました。着信があると素早く別室へ移動する。「店のスタッフからの連絡が多いから」と言われれば、否定できません。でもその頻度と様子は、業務連絡の範囲を超えていました。
店長という立場が持つ構造
飲食店の店長は、アルバイトスタッフに対して大きな影響力を持つ立場です。シフトの決定権、業務の指示権、評価への関与——こうした力関係の中で、スタッフは店長の言動に従いやすい環境に置かれます。
特に学生アルバイトは社会経験が少なく、「店長に気に入られたい」「シフトを削られたくない」という心理が働きやすい。断りにくい状況が、構造として生まれやすい。
配偶者の側からすると、「仕事で帰れない」という説明は店長という立場では通りやすく、実態を確認する手段がありません。「仕事熱心」という解釈が疑いを打ち消し続けます。Eさんが「自分を信じていいのかわからなくなっていた」と言ったのも、この構造の中にいたからでした。
職場・仕事関連の不倫の構造については別シリーズでも解説していますが、上司と部下という力関係が絡む不倫は、一般的な職場不倫とは異なる深刻さを持ちます。
調査の概要
Eさんから得られた情報は以下の通りでした。
- 夫が店長を務める店舗の場所・営業時間
- シフト外での出勤が増えた時期と頻度
- 帰宅しない日のパターン
- 夫が使用する交通手段(自家用車)
「今夜は帰れない」という連絡が入った夜に合わせて調査を開始しました。
1日目、閉店後に夫が店舗から出てきました。同行していたのは若い女性スタッフでした。夫の車で移動し、八千代市内のラブホテルへ入場。チェックイン・滞在・退出の場面を映像で記録しました。
女性の外見・年齢感から、学生と思われる若い人物であることが確認できました。後の調査で、同店舗に勤務する未成年のアルバイトスタッフであることが判明しました。
2日目も同じ夜に実施。閉店後に同じパターンで店舗を出た夫が、同じ女性と同じラブホテルへ。前回と変わらない行動が記録されました。
3日目・4日目も同様の流れを確認。複数日にわたって同一のパターンが繰り返されました。
5日目は昼間の調査を実施。シフト外のはずの時間帯に夫が店舗に現れ、同じ女性とともに店内に入る場面を確認。閉店まで二人が店内にいることを記録しました。
調査期間は3週間、実調査は5日間でした。
「仕事熱心だと思っていた時間が、全部そういうことだったと思うと」
報告を受けたEさんは、映像を確認しながら言葉が出なくなったといいます。相手が未成年のアルバイトスタッフだと聞いたとき、怒りを通り越した、と。
「仕事熱心だと思っていた時間が、全部そういうことだったと思うと。しかも相手がそんな若い子で」
夫に証拠の存在を告げると、否定しませんでした。未成年のスタッフとの関係、複数日にわたる記録——すべてを突きつけられた前に、言い訳の言葉はありませんでした。
弁護士との相談で、このケースの特殊性が整理されました。相手が未成年であること、職場における明確な上下関係があったこと、店長という立場を利用した関係であったこと——これらが夫側の行為の悪質性を高める事情として判断されました。慰謝料交渉では、通常のケースと比較して高額の慰謝料を受け取ることができました。
相手のスタッフへの対応について、Eさんは一つの判断をしました。未成年であること、職場の力関係の中で断りにくい状況にあった可能性、その後の生活への影響——これらを考慮して、相手の親や勤務先への通告は行わないという選択をしました。
「あの子の人生を壊したいわけじゃない。悪いのは夫だから」
その言葉を聞いたとき、Eさんという人の大きさを感じました。怒りの中にいながら、それでもそういう判断ができた。
離婚が成立しました。
店長・管理職という立場の不倫に気づくために
「帰れない日」が特定のパターンで続くとき。閉店時間は決まっています。「終電を逃した」という説明が繰り返される日の時間帯・曜日が一定の場合、その日の実際の行動を確認することが手がかりになります。浮気が発覚するきっかけとして、こうした説明と実態のずれは多くの事例に共通して現れます。
翌朝の帰宅時の様子が「長時間働いた」らしくないとき。疲れていない、すっきりしている——Eさんが感じていた「何かが違う」という感覚は、長く一緒にいるからこそ気づけるものでした。浮気のサインと照らし合わせてみてください。
シフト外での出勤が増えたとき。店長という立場ならあり得る行動です。ただしその頻度が急に上がった時期と、他の変化が重なっているなら確認する価値があります。
深夜・早朝のスマートフォンの連絡が増えたとき。飲食店のスタッフ連絡は営業時間内に集中するのが通常です。業務時間外の連絡が頻繁に来るようになったとき、それが業務の範囲内かどうかは確認の余地があります。
よくある質問
Q. 相手が未成年の場合、慰謝料の請求額に影響しますか? A. 影響する可能性があります。相手が未成年であること、職場の上下関係・立場の利用という事情は、夫側の行為の悪質性を高める要素として慰謝料の算定に考慮される場合があります。
Q. 相手(未成年のスタッフ)への請求はしなかったのですか? A. Eさんのケースでは、相手が未成年であること・職場の力関係という事情を考慮して、請求を行わないという判断をしました。請求するかどうかは依頼者の判断によります。
Q. 相手の親や勤務先に通告しないことは問題ありますか? A. 通告しないことは法的に問題ありません。通告するかどうかは依頼者の判断です。ただし通告する場合は名誉毀損等の問題が生じる可能性があるため、事前に弁護士へ相談することをお勧めします。
Q. 「帰れない日」が本当に仕事かどうか確認できますか? A. 可能です。調査によって、「帰れない」と言っていた夜の実際の行動を記録することができます。閉店後の行動を追うことで、説明との乖離が明らかになります。
Q. 職場の力関係を利用した不倫は、通常より慰謝料が高くなりますか? A. 状況によっては、行為の悪質性を示す事情として慰謝料の算定に考慮される場合があります。弁護士との連携のもと、具体的な金額については証拠と状況を整理した上でご相談ください。
まとめ
八千代市在住・30代夫婦のケース。飲食チェーンの店長として勤務する夫が、同店舗の未成年アルバイトスタッフと不倫していたことを、3週間・実調査5日間で記録しました。未成年・職場の上下関係という事情が慰謝料交渉に考慮された結果、高額の慰謝料を受け取った上で離婚が成立しました。
「あの子の人生を壊したいわけじゃない。悪いのは夫だから」——Eさんがそう言えたのは、怒りの中でも相手を人として見ていたからだと思います。
「仕事熱心だと思っていた」という信頼が崩れるとき、その痛みは大きい。でも感じていた違和感は、正しかった。まずご相談ください。


