テーブルに書類の束を置いたとき、Nさん(30代・女性)の様子は落ち着いていました。

飲食店の領収書、ETCの利用明細——どれも会社名義で処理されていました。「これを見てください」という言い方ではなく、「これが証拠になりますか」という確認をしに来た、という雰囲気でした。

「領収書を見たとき、これは絶対におかしいと思いました。経理をやっていたので、すぐわかりました」

「腑に落ちない」が積み重なっていった

夫は婿養子として、Nさんの両親が経営する会社で働いていました。会社名義の車で動き回れる、ETCカードも会社持ち、接待費という名目で飲食代を経費処理できる立場でした。

Nさんはその会社の経理を担当していました。夫が提出する領収書を日常的に処理している立場です。

最初に違和感を覚えたのは、特定の飲食店の領収書が繰り返し出てくるようになった頃でした。接待に使うには場所が不自然。金額が2名分にしては多い。時間帯が業務時間外。一枚一枚を見ると、それなりの説明がつきます。でも経理として数字を見続けていると、「これは仕事ではない」という感覚が積み重なっていきました。

ETCの利用明細も気になりました。業務で使うはずのない時間帯、業務とは無関係な方向への利用が複数回記録されていました。

「夫に確認すると、毎回それなりの説明をしてくれるんですが、腑に落ちなくて。でも証拠がないと何も言えないし、親の会社のことだから余計に慎重にならないといけなくて」

ゴルフが趣味の夫は、練習場やゴルフショップに頻繁に立ち寄っていました。それ自体は以前からのことで、疑っていませんでした。しかしETCの利用先にゴルフ場やショッピングモール付近が含まれ始めたとき、Nさんは動くことを決めました。

婿養子という立場が持つ「見えにくさ」

婿養子として妻の実家の会社で働く立場には、特有の構造があります。

経費の使用について、外部からの監視が効きにくい。実の家族が経営しているため、社内でのチェックが甘くなりがちです。「業務上の使用」として処理できる範囲が広く、どこまでが仕事でどこからが私的使用かの線引きが曖昧になりやすい。

Nさんのケースでは、会社名義車の私的使用、ETCカードの不正使用、飲食費の経費処理——これらが不倫相手との費用に充てられていました。職場・仕事関連の不倫は別シリーズでも解説していますが、このケースは経費という客観的な記録が証拠として機能したという点で、特異なケースです。

調査の概要

Nさんから得られた情報は以下の通りでした。

  • 夫の勤務時間・退社後の行動パターン
  • 頻繁に立ち寄っているゴルフショップの場所
  • 会社名義車の情報
  • ETCの利用記録から特定できたエリア

退社後の行動確認から調査を開始しました。

1日目、夫は退社後に会社名義の車でゴルフショップへ。店内で20代前半と思われる女性スタッフと親しげに話す場面を確認しました。その後二人で店を出てカフェへ、ゴルフ練習場へ、そして閉場後にラブホテルへ入場。チェックイン・滞在・退出の一連を映像で記録しました。

2日目も同じパターンが繰り返されました。ゴルフショップで女性と合流し、練習場を経由してラブホテルへ。

3日目は練習場を経由せず、退社後に直接ゴルフショップへ。女性のバイト終了時間に合わせて待機していた様子で、女性が出てくると合流しました。飲食店で食事をした後、ラブホテルへ。その飲食店での会計は、会社名義のカードで支払われていました。

4日目・5日目も同様のパターンが確認されました。退社後のほぼ毎日、女性と合流していたことが複数日の記録から明らかになりました。

調査期間は3週間、実調査は5日間でした。

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「うちの親が汗水垂らして稼いだお金を」

調査結果を報告した際、Nさんは映像を確認しながら、飲食店での会社カード払いの場面で表情が変わりました。

「やっぱりそうだったんですね。しかも経費で。うちの親が汗水垂らして稼いだお金を、そんなことに使って」

その場で親に連絡を入れました。両親も同席する形で報告を受け、父親は怒りを抑えながら「全部弁済させる」と言ったといいます。

夫に証拠の存在を告げると、言い訳は出てきませんでした。映像・領収書・ETCの記録という複数の証拠の前に、否定する言葉がありませんでした。

二本立ての法的手続き

このケースでは、二つの方向から手続きが進められました。

一つ目は、Nさん個人として夫への慰謝料請求でした。複数日にわたる継続的な関係の証拠が揃っていたことで、相応の慰謝料を受け取りました。

二つ目は、Nさんの父親が経営する会社として、経費不正使用に対する損害賠償請求でした。会社名義車の私的使用、ETCカードの不正使用、飲食費の不正経費処理——調査で記録された証拠が、損害の実態を示す資料として機能しました。

相手のゴルフショップスタッフへの慰謝料請求も、示談という形で解決しました。

夫は離婚と同時に会社を解雇され、会社名義の車も返却しました。婿養子という立場も解消されました。職も住まいも、築いてきたものをすべて失う結果になりました。

「かわいそうとは思わない。自分でやったことだから」

Nさんはそう言っていました。静かな声でしたが、ずっしりと重かった。

「経理の目」が発端になったこと

このケースで特徴的だったのは、感情的な疑いではなく、数字の違和感が調査のきっかけになったという点です。

領収書一枚、ETCの明細一行——それ自体は小さな記録です。でも経理として数字を見続けてきたNさんには、「これは仕事ではない」という確信がありました。その確信は正しかった。

不倫を疑うとき、多くの方は「証拠がないと言えない」と感じます。しかし感情的な疑いでなくても、客観的な記録があれば動けます。通帳の引き出し、カードの利用履歴、ETCの明細——日常の中にある数字の変化が、手がかりになることがあります。浮気が発覚するきっかけとして、こうした客観的な記録の変化は見逃しやすいものの中に含まれます。

こういう変化が重なったとき

領収書・カード明細に説明のつかない支出が出てきたとき。「これは仕事ではない」という感覚は、家計や経理を管理している立場の方には特に鋭く働きます。その感覚は多くの場合、正しい。浮気のサインと照らし合わせてみてください。

ゴルフ関連の外出が増え、同行者が曖昧になったとき。「一人で練習」「友達と」という答えが続く中で、特定の店舗への立ち寄りが頻繁になってきたとき。その店舗での行動を確認する価値があります。

退社後の行き先が読めなくなったとき。「ちょっとゴルフ用品を見てくる」という外出が増えてきた場合、その「ちょっと」が毎回長くなっているなら、実態の確認が必要です。

会社名義の車・カードの私的使用が疑われるとき。業務時間外の利用記録、業務と無関係なエリアへの移動——こうした記録は客観的な証拠として機能します。証拠の使える・使えないの分かれ目については別記事も参考にしてください。

よくある質問

Q. 会社の経費を不倫に使っていた場合、会社として請求できますか? A. 可能です。会社経費の不正使用は、雇用主に対する損害として損害賠償請求の対象になり得ます。不正使用の証拠が揃っていることが重要です。弁護士との連携をお勧めします。

Q. 婿養子の離婚では財産分与はどうなりますか? A. 婿養子の解消と離婚は別の手続きです。財産分与については婚姻期間中に築いた財産が対象になります。複雑なケースになることが多いため、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。

Q. 会社名義の車の私的使用は証拠になりますか? A. ETCの利用記録・行動の記録などと組み合わせることで、私的使用を示す証拠として機能します。調査によって行動記録として残すことも可能です。

Q. 離婚と同時に婿養子の解消もできますか? A. 離婚と養子縁組の解消は別の手続きですが、同時並行で進めることができます。弁護士と連携しながら手続きを進めることをお勧めします。

Q. ゴルフショップのスタッフへの慰謝料請求はできますか? A. 既婚者と知った上での不貞行為であれば、請求できます。慰謝料を両方に請求できるかについては別記事も参考にしてください。

まとめ

横浜市在住・30代夫婦のケース。婿養子として妻の実家の会社で働く夫が、会社の経費を使ってゴルフショップのアルバイトスタッフと不倫していたことを、3週間・実調査5日間で記録しました。慰謝料請求・会社への損害賠償請求・スタッフへの請求を同時に進め、夫は職・車・立場のすべてを失いました。

Nさんが最初に動いたのは、怒りからではありませんでした。経理として数字を見てきた目が、「これはおかしい」と判断したからでした。

「かわいそうとは思わない。自分でやったことだから」——その言葉は静かでしたが、ずっしりと重かった。まずご相談ください。

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