「示談で慰謝料の合意ができたが、本当に払ってもらえるか不安」「口約束では後でトラブルになりそうで心配」「公正証書にすると聞いたが、何がどう違うのか分からない」——不倫慰謝料の示談が成立した後、多くの方が「公正証書」という言葉を耳にします。
結論から言えば、不倫慰謝料の合意は、必ず公正証書として残すことをお勧めします。 口頭の合意・簡単な合意書では、後になって「払わない」と言われたときに対応が困難になります。公正証書にすることで、裁判を経ずに強制執行が可能になるという大きなメリットがあります。
この記事では、不倫慰謝料における公正証書の必要性・作り方・費用・支払いが滞った場合の対処法をわかりやすく解説します。
公正証書とは何か
公正証書の仕組み
公正証書とは、公証人(法務大臣が任命する法律の専門家)が作成する公文書です。
公証役場(全国各地にある公証人が執務する場所)で、当事者双方が合意した内容を公証人が書面にまとめ、公証人の認証を受けることで作成されます。
公正証書の特徴
公正証書には、通常の合意書・示談書と異なる以下の特徴があります。
①改ざんが困難
公証人が作成する公文書であるため、内容の改ざんが困難です。「そんな合意はしていない」という言い逃れを防ぐことができます。
②証拠力が高い
公文書として高い証拠力を持ちます。裁判・調停において重要な証拠として機能します。
③強制執行が可能(執行認諾条項付きの場合)
「強制執行認諾条項」を盛り込むことで、支払いが滞った場合に裁判を経ずに強制執行ができます。これが公正証書の最大のメリットです。
なぜ公正証書が必要か
口頭の合意・簡単な合意書の限界
不倫慰謝料の合意を口頭または簡単な合意書(示談書)で行った場合、以下のリスクがあります。
①「言った・言わない」のトラブル
口頭の合意は証拠として弱く、後から「そんな約束はしていない」と言われた場合に対応が困難です。
②支払いが滞った場合に裁判が必要
合意書があっても、支払いが滞った場合は裁判(訴訟)を起こして判決を得た上で強制執行する必要があります。裁判には時間・費用・精神的な負担がかかります。
③合意書の内容が不明確なトラブル
専門家が関与せずに作成した合意書は、内容が不明確・不完全なことがあり、後のトラブルにつながります。
公正証書にするメリット
①裁判なしで強制執行できる
「強制執行認諾条項」を盛り込んだ公正証書があれば、支払いが滞った場合に裁判を経ずに強制執行(給与・預金の差し押さえなど)ができます。
②心理的な抑止力になる
公正証書の存在が、相手に対して「払わないと強制執行される」という心理的な抑止力になります。
③内容が明確・完全
公証人が関与することで、合意内容が明確・完全な形で記録されます。
公正証書に盛り込むべき内容
基本的な記載事項
不倫慰謝料の公正証書に盛り込むべき主な内容は以下の通りです。
①当事者の特定
- 申立人(慰謝料を受け取る側)の氏名・住所・生年月日
- 相手方(慰謝料を支払う側)の氏名・住所・生年月日
②不倫の事実の確認
- 不倫の事実を相手方が認める旨の記載
- 不倫の期間・内容(概略)
③慰謝料の金額・支払い方法・期限
- 慰謝料の総額
- 一括払いの場合:支払い期限・振込先口座
- 分割払いの場合:分割回数・各回の金額・支払期日・振込先口座
④強制執行認諾条項
最も重要な条項です。「支払いを怠った場合、強制執行に服する旨を認諾する」という内容を盛り込みます。この条項がないと、支払いが滞った場合に裁判が必要になります。
⑤関係の終了・連絡禁止
- 不倫相手(配偶者)との関係を完全に終了する旨
- 今後一切連絡を取らない旨
⑥口外禁止条項
- 不倫の事実・示談内容を第三者に口外しない旨
⑦清算条項
- 本合意書に定めるもの以外に、双方間に何らの債権債務関係が存在しないことを確認する旨
⑧違約金条項
- 合意内容に違反した場合の違約金を定める条項(任意)
公正証書の作り方
STEP① 合意内容の確認
まず当事者間で慰謝料の金額・支払い方法・その他の条件について合意します。この段階で弁護士に相談することをお勧めします。当社では顧問弁護士への無料紹介も行っております。
STEP② 公証役場への事前相談・予約
最寄りの公証役場に事前相談・予約を行います。公証役場は全国各地にあります。事前に合意内容を伝えておくことで、当日の手続きがスムーズになります。
STEP③ 必要書類の準備
公正証書の作成に必要な主な書類は以下の通りです。
当事者双方が必要なもの
- 本人確認書類(運転免許証・パスポートなど)
- 認印または実印(実印の場合は印鑑証明書も必要)
その他
- 合意内容のメモ・草案(事前に作成しておくとスムーズ)
STEP④ 公証役場での手続き
当事者双方が公証役場に出頭し、公証人の前で合意内容を確認します。公証人が内容を確認した上で公正証書を作成します。
代理人による手続き
本人が出頭できない場合、弁護士などの代理人が手続きを行うことができます。
STEP⑤ 公正証書の受け取り
公正証書が作成されたら、各当事者に正本・謄本が交付されます。正本は公証役場に保管されます。
公正証書の費用
手数料の計算方法
公正証書の作成費用(公証人手数料)は、慰謝料の金額(目的価額)に応じて以下の基準で計算されます。
| 目的価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
| 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 3,000万円以下 | 23,000円 |
| 5,000万円以下 | 29,000円 |
上記に加えて、用紙代・送達料などの実費が必要になります。
弁護士に依頼した場合の費用
弁護士に公正証書の作成を依頼した場合、弁護士費用が別途かかります。金額は弁護士事務所によって異なりますが、数万円〜十数万円程度が目安です。
分割払いの場合の注意点
分割払いのリスク
慰謝料を分割払いにする場合、途中で支払いが止まるリスクがあります。
公正証書に「強制執行認諾条項」を盛り込んでおくことで、支払いが滞った場合に強制執行ができます。分割払いの場合は特に、この条項が重要です。
期限の利益喪失条項
分割払いの場合は「期限の利益喪失条項」を盛り込むことをお勧めします。
「一定回数の支払いを怠った場合、残額を一括で支払う義務が生じる」という条項です。この条項があることで、支払いが滞り始めた段階で残額全額の強制執行が可能になります。
支払いが滞った場合の対処法
①督促する
まず電話・メール・内容証明郵便などで支払いを督促します。
内容証明郵便による督促は、証拠として残るとともに心理的な圧力を与える効果があります。不倫慰謝料請求の内容証明郵便もあわせてご参照ください。
②強制執行を申し立てる
公正証書に「強制執行認諾条項」が盛り込まれている場合、裁判なしで強制執行を申し立てることができます。
強制執行の対象としては以下のものがあります。
- 給与の差し押さえ(手取り額の4分の1まで)
- 預金口座の差し押さえ
- 不動産の差し押さえ
③強制執行認諾条項がない場合
公正証書に強制執行認諾条項がない場合、または公正証書を作成していない場合は、裁判(支払督促・訴訟)を経て強制執行を行う必要があります。
よくあるご質問
Q. 公正証書は必ず必要ですか?
A. 法律上の義務ではありませんが、強くお勧めします。特に分割払いの場合、支払いが滞ったときに裁判なしで強制執行できる公正証書の有無が大きな差になります。
Q. 相手が公証役場に来ることを拒否しています。どうすればいいですか?
A. 代理人(弁護士)による手続きも可能です。また相手が公正証書の作成に応じない場合、調停・裁判での解決を検討することをお勧めします。当社では顧問弁護士への無料紹介も行っております。
Q. 一括払いの合意でも公正証書にした方がいいですか?
A. はい、一括払いの場合でも公正証書にすることをお勧めします。「払った・払っていない」というトラブルを防ぎ、合意内容を明確に記録することができます。
Q. 公正証書を作成した後に金額を変更することはできますか?
A. 当事者双方が合意した上で、変更内容を記載した新たな公正証書を作成することができます。一方的な変更はできません。
Q. 弁護士なしで公正証書を作成できますか?
A. 可能ですが、弁護士に依頼することをお勧めします。特に強制執行認諾条項・期限の利益喪失条項など、重要な条項の記載漏れを防ぐためにも専門家の関与が重要です。
まとめ
不倫慰謝料の公正証書についてまとめます。
公正証書にするメリット
- 裁判なしで強制執行できる(強制執行認諾条項付きの場合)
- 「言った・言わない」のトラブルを防げる
- 高い証拠力を持つ
- 心理的な抑止力になる
盛り込むべき主な内容
- 慰謝料の金額・支払い方法・期限
- 強制執行認諾条項(最重要)
- 関係の終了・連絡禁止
- 口外禁止条項
- 清算条項
- 分割払いの場合は期限の利益喪失条項
作成の流れ
- 合意内容の確認→公証役場への予約→必要書類の準備→公証役場での手続き→公正証書の受け取り
示談が成立したとき、「これで終わった」と安心するのはまだ早いです。合意内容を確実に守ってもらうために、公正証書という形で残しておくことが重要です。一人で抱え込まずにまずご相談ください。当社は創業30年・相談実績3万件以上の実績で、証拠収集から弁護士紹介まで、トータルでサポートします。
